2002年11月10日
HDRと広告視聴
最近、HDD Recorder やそれにDVD-RWがついたものなどの売れ行きが伸び始めている。まだ高価であるが、もう少し価格がこなれたらカセットテープを駆逐したCD, MDのようにVHSビデオからの世代交代が進むだろう。
さて HDR に絡んでチャンネルスキップが問題となっている。特に、広告ベースで視聴者には無料で番組を提供してきたTV局にとっては死活問題である。アメリカでは ReplayTV に関して訴訟が進行中である。ところで internet.comの記事によれば、PVR 製品所有者の圧倒的多数はなお一部のCM を見ているという。ただし、どのCMを見るかについてはなお選り好みされているということである。
もっとも、マス媒体による宣伝は、生活習慣・消費嗜好の多様化によってコスト対効果の点で商品によってはかなり疑問視されているところもあり、HDRの有無に限らず、広告というものがここしばらくで急速に変わっていくだろう。収益源を多様化するためにTV局は infomarcial に相当興味を持っていることもあり、今後広告と番組の境がなくなっていくような気がしている。
2002年10月21日
インタラクティブTV
個人的には、インタラクティブTVというのはあまり興味が湧かないし、事業としてもうまくいかないと思っていたが、The Economist Oct.19, 2002 の記事 Texting the television によれば、ヨーロッパにおいて携帯電話のテキストメッセージを利用した番組参加が、若年層の間に浸透しつつあるようである。記事によれば、フランスの10代の20%, イギリスの11% がテレビ番組に対して投票などをしている。この手の番組の中で有名な "Big Brother" はのべ540万件のメッセージを受け取り、210万ドルもの収益を上げている。ビジネスモデルとしては、電話会社が半分の収益をとり、残りを番組制作者やシステム提供者で分け合うという形になっている。
STB を使った双方向TV事業はどの国でも苦戦しているが、この記事のような報告を見ると必ずしもインタラクティブTV自体が駄目なのではない気がしてくる。ep のようにボタンのたくさんついた STB のリモコンを見ると「次世代双方向TVというのはこんなに面倒くさいものなのか」とげんなりしてしまうが、うまく他のメディアと組み合わせて実現することで面白いインタラクティブTVの世界が作れそうである。
2002年10月01日
盗撮
カメラ付き携帯電話や小型ビデオカメラなどが出てくると、スカートの中を盗み撮りしたりしようとする輩がでてくる。こういった行為を抑止する必要があるが、どのような法律で取り締まるのかについては難しい点もあるようだ。CNET の記事「公の場での「スカートの中の撮影」に合法判決」では、米ワシントン州の最高裁判所が、超小型カメラで成人女性や少女の写真やビデオを隠し撮りした男2人に対して、「嫌悪すべき最低の行為をした」と非難したものの、写真や映像が公共の場で撮影されたため、これをプライバシー侵害であるとする正当な理由はないとの判断を下したことを紹介している。
もちろん、だからといってこのような行為が正当化されてよいわけではなく、例えば許可なく他人の「身体の一部」をビデオ撮影することを禁止したカリフォルニアの州法 のように別の方法で制限をすればよい。ただ、ことさら制約が強くなると、町の風景を撮影したときに顔が映ったらその全員に許可を得なければならないのかといった話になり、それはそれでやりにくくなる。その意味で、この判決は筋が通ったものであるようにも見える。
ちなみに判決文によると、寝室、浴室、更衣室などでは当然、誰もがプライバシーが存在するものと考えてよいという。トイレの盗撮などはワシントン州においてもやはり犯罪である。
2002年09月12日
環境映像と自然保護活動
ひさびさに面白いサイト紹介。国際環境NGO FoE Japan のストリーミング。ストリーミングの映像自体は普通の自然環境に関する映像でどうということはないが、面白いのはこの映像の視聴を自然保護のための寄付を募るために利用している点である。単なる自然環境の映像に対してなかなかお金を払う気は起こらないが、こういった形であれば払ってみようという気にさせられる。実際問題として、どのくらい払ってくれると採算が合うのか、実際にそんなに払ってくれるのかは分からないけれども、面白い取り組みだと思う。
2002年09月02日
韓国の映像配信ビジネス
私は韓国に行ったこともないしハングルも読めないしほとんど知識がないのだが、偶然東亜日報でちょっと気になる記事を見つけた。
有料の映像配信が人気を呼んでしていくようであるしていくようであるいるとのことである。たとえばコリアドットコムで(実感価格を知らないので 1ウォン = 0.1円換算)で200本程度の品揃えで700-800万円程度の利益を上げているらしい。この記事では映画館よりも売り上げが大きいようなことを書いてあるが、比較方法に疑問があるのでそれは取り上げない。しかし、ユーザからも「この品質であれば有料でも惜しくない」といった声があるようで、続々と参入が続いているとのことである。
インターネット放送ではお金が取れないとかPCでは映画を見ないといった話も聞くが、映像が大きくてきれいであればこの例でも分かるように結構ユーザはつくのだと思う。記事はここ。
日経コミュニケーション 2002.9.2 はYahoo!, JDS, ヒットホップスのブロードバンド放送について報じている。その中で、番組供給事業者にとって、CATV事業者からの視聴料分配率は低下しており(16%程度)、その分低コストインフラであるADSL放送に期待する向きもあるという。まあ、ADSLでどの程度の映像品質が保てるのか疑問もあるが、ローカルの蓄積メディアとうまく組み合わせることができれば、安いパイプとしてのメリットを生かしたインターネット放送が始まるのだろう。
2002年08月25日
ドキュメンタリのストリーミング配信
夏休みで更新をさぼっていたわけではなく、最近インターネット放送に関して面白いネタがない。
そんな中で残念だったのはgoo Broadband 内のドキュメンタリ部門がなくなってしまったことである。地上派TVのほうでもテレビ朝日の「ザ・スクープ」の打ち切りに関する議論が巻き起こっているところでもあり、せめてインターネット放送ではこのような硬派な番組に対するサポートをして欲しいと願うばかりである。
そんな中で、「組織に属さないジャーナリスト」によるニュース・ドキュメンタリ報道がなされていることを知った。ASCIIのサイトにある「歌田明弘の地球村の事件簿」vol.236の記事で紹介されている Independent Media Center, Free Speech TVである。サイトの詳しい紹介はASCIIの記事に譲るとして、このようなメディアが発展できる環境をつくることがインターネット放送の存在意義である。純粋なビジネスとしては難しいだろうが、じっくりと育てていきたいものである。
2002年08月08日
ブロードバンドのうれしさとは?
数ヶ月前に発表されたものだが、インターネットの社会的インパクトについて研究している Pew Research Center によるレポートThe Broadband Differenceが非常に興味深かった。FCCの定義によれば、ブロードバンドは上り下りとも 200kbps 以上のネットワークをいう。
調査結果の要点として、以下が報告されている。
- 開かれたインターネットはブロードバンドユーザにとって価値がある。様々な情報を得たい、または得られる可能性があるというのが最大の魅力。
- ダウンロード速度だけでなく、アップロード速度にも価値がある。P2Pを使ったり、IMやblogなどによる情報発信も重要な要因。
- ブロードバンドのキラーアプリは言うなれば「マルチタスキング」である。つまり、音楽ダウンロードをしながらIMで友人とチャットし、ニュースサイトを見るといったことを同時に行えるということである。
特に印象的なのは1番目の「ブロードバンドの価値は無限の情報やコミュニケーションの可能性があること」という点。インターネット放送についていえば、いくらQoSが確保しやすいからといって、閉じたCATV網やADSL網内の放送を受信するためだけに用意されたSTBを使ったストリーミング放送は魅力がないということを述べている。確かに、CATVやCS放送によって放送の多チャンネル化は十分に実現できており、よりコストが高く品質の低いストリーミング放送を利用する必然性はない。「品質は低いかも知れないが、思いもよらない放送が受信できる」というところがブロードバンドネットワークの価値から導き出されるインターネット放送の本質的な魅力となるはずだ。サービスを設計するときには肝に銘じておきたいと思った。
2002年08月06日
有料コンテンツの売り上げ
Aug.1 の話と関連して、米国のオンライン出版団体が110万人を対象とした調査でも、有料コンテンツの売り上げが2001.1Qから2002.1Q の1年間で倍増していることが確認された(Online Publishers Association のレポート)。全ネットユーザの10%が何らかの有料コンテンツを利用していると考えられる。この数字にはポルノやギャンブルは含まれていない。特に伸びが著しいのは出会い系のようだが、ビジネス関連やエンタテインメント関連を含めたすべての分野で伸び率は100%前後になっている。課金形態はサブスクリプションが85%となっており、コンテンツ課金は15%にすぎない。
そしてやはり成功している事業者は寡占化が進んでいる。売り上げの上位85%を50社が占めているということである。よいコンテンツを持っている事業者の収益はあがっていくが、競争が非常に厳しいのでビジネス環境としては楽なものではないだろう。
2002年07月30日
CATVは儲からない
Fortune Broadband Bust-Up より。
アメリカのCATV会社の苦境を伝えている。アメリカのCATV会社の経営は悪く、株価の下落率は電話会社と同じである。唯一の違いは、CATV会社は実は過去20年間で収益を生み出していないことである。EBITDAベースでは大きな利益を計上した年もあったが、設備投資のための借金が多くてキャッシュフローを見ると赤字である。資本調達コストに対して常に収益力のほうが弱かった。ケーブルテレビは地域独占事業で、視聴料金も上昇しているにも関わらずである。
このような状況が続けば、昨今の株安を受けてアメリカのブロードバンドインフラの整備に遅れが生じることは必至であり、早急な対策が必要である。
日本でもCATV事業は苦しい状況にあり、そのためインターネット接続サービスによる収益が必要であるといった話を聞く。しかし、逆にインターネット接続サービスにしか入っていないユーザも多いようである。見もしないチャンネルを多数契約させられるのは割高感が強いからであろう。それならば、いっそ高いQoSを維持するようにしてインターネット放送経由で配信したほうが運用コストは低下する気がしているのだが。
2002年07月25日
攻撃は最大の防御?
2002.July24 ZDNet News (US版、日本版では見当たらなかった)Could Hollywood hack your PC? によればインターネットを利用した著作権侵害に対して攻撃的な対策を認める法案の提出が準備されているようである。
この法案は P2P などによって著作権侵害が行われている場合、著作権団体がそのような行為ができないようにユーザの通信を遮断したり、損害を与えたり(impair)することを認めるというものである。一言でいうとクラッキング(ハッキングとは言いたくない)を認めるということになる。
私の意見ではクラッキングは財産権の侵害にあたると思うので、この法案がそのまま通るとは考えにくい。もしこのような法案が通過したら、合法的なP2Pソフトはすべからくセキュリティホールを作っておかなければならないといった話になるのだろうか??そもそも、インターネットの本質は End-to-End がP2P で通信するというものであり、いわゆるP2Pはサーバの設備投資を伴わずにに大量の映像データを交換するためには大変有効な技術である。その意味でも、おかしな結果にならないようになることを願っている。
2002年07月21日
EPGビジネスは難しい
ここ半年、インターネット上のEPGサイトの閉鎖が相次いでいる。WebTV(マイクロソフト系), InterTV(富士通系), TV Marker(東芝系), Lycos テレビなど(Archive.org などを利用すれば以前にどのようなサービスをやっていたか見ることができる)。EPG は多チャンネル時代の必須サービスであるとか、パソコンでTVを見る人が増加してきたとかいっても、ビジネスとしてEPGを成り立たせるのは現実難しいことを示している。単なる番組一覧であれば、テレビ局からのプログラム取得にかかるコスト以上の収益を上げにくいし、かといって付加価値をつけるにもその分のコストを正当化できるだけのビジネスモデルができているとは言いがたい。
そもそも、現在のTV番組でわざわざEPGにコストをかけてまで見る価値があるものがどのくらいあるのかに疑問を感じることがある。個人的には、HDR の普及が進まないのもこれが一因ではないかと思っている。見逃してがっかりという番組はあるものの、どうしても見逃したくないという番組はほとんどない。マス向けの今のTV番組ではそれほど番組の希少性がないのがEPGやHDRが普及しないそもそもの原因ではないかと考えている。
2002年07月14日
地域密着番組
"Smaller TV Stations Dropping Local News", By Aaron J. Moore, Media Life より。
アメリカのCATVの話だが、地域密着番組が過当競争になり、採算が合わなくなって撤退しているところもあるらしい。インターネット放送でいけそうなコンテンツに地域密着型番組があると思っていて、例えば天草TV などはなかなか面白い。しかし当然のことながらこの分野でも Only One の特徴が出せないと生き残ることはできない。どのビジネスドメインでもそうだが、儲かると思う領域にはすぐに多くの人が参入してきて戦いになるからである。
逆に、日本でも早く地域密着番組の競争時代がこないかなと期待している。
2002年07月07日
N+I, Streaming Media Japan 2002
そういえば、今年のNetworld+Interop 2002 ではストリーミング関係の出し物が非常に少なかった。6月上旬に Streaming Media Spring Japan があってそれもいったが、Microsoft と NTT が共同でおこなっている Corona のデモ以外、目だった話題はなかった。これは Interop でもやっていた。
Corona のデモは6Mbps でHDTV 5.1ch サラウンドというもの。古巣で元同僚がやっているのであまりいえないが、Streaming Media Japan のデモでは B フレッツの帯域は念のため 25Mbps 確保していたとのこと。ターゲットレートが 6Mbps だろうから瞬間的にはそれより多いビットレートが必要なこと、デモであるので、この程度のマージンをとるのはしかたないだろう。データの品質としては十分。しかし、実際の映像品質となると、まだBSデジタル放送に比べてこなれていない点が目立ち、ディスクアクセスに伴って一瞬映像が止まったり、主観的映像品質もさほど高くない。この点は家電メーカーのTV部隊に一日の長がある(と今の部署を持ち上げてみる)ので、今後良いパートナーと組んでチューニングを進めることで改善されるだろう。
Windows Media Technology はチップメーカーと共同で、DVDプレーヤ用のチップなどの開発も進めているらしい。家電に入り込むためには、高熱を発するCPUをぶんまわす処理だけでは難しく、低消費電力で高性能が可能なハードウェアソリューションも必要になってくる。DSP向けファームウェアの開発も並行するはずで、今後の周辺環境の進展に注目していきたい。
2002年07月06日
N+Iの吉本興業の講演
Networld+Interop 2002 におけるファンダンゴ社長中井氏の講演を聴いたが大変面白かった。
ファンダンゴは吉本興業のニューメディア事業を行う子会社であり、CSの吉本チャンネルを運営したり、インターネット上のサイトファンダンゴを運営したりしている。このサイトは、本日記の 2002.3.25の記事でも紹介しているが、確実に利益を上げつつある現時点では数少ないブロードバンドサイトである。
吉本は戦前のラジオから新しいメディアにとりくんできたが、その活動の原点は劇場であることをいまでも頑なに守っている点が最大の強みであると感じた。中井氏によれば、たとえ無料のチケットであってもわざわざ劇場に足を運んでくれるお客様が一番であり、この人たちに見放されたら会社はつぶれる。これに対して、地上波TVは現在製作にもっともお金がかけられ儲かるものの、もっともモチベーションが低いお客を相手にしているとのことである。有料CSやインターネット放送の客はその中間になるのだろうか。もしかしたら今後地上波はマスパブリシティー用の媒体となり、本当にお金の取れるコンテンツはCSやインターネットで配信、という形になるかもしれないと予測していた。
現在の日本において地上波TVはマスメディアとしては最大であるものの、TVで放送した場合の著作権の所在があいまいでアメリカのようなシンジケーション市場ができないため、クリエータが儲からずTV局が儲かるしくみになっており、これを打破していきたいと考えているとのことである。常時接続・定額制になり、インターネット接続がやっと「タダ」の感覚になってきたので、やっとコンテンツにお金を払ってもらえる土壌ができたという認識をもっている。しかし、現在のインターネット放送の品質ではまだ不十分であり、その一例として、ボケと突っ込みの間にバッファリングによる遅延が入ってしまったらテンポが狂い何にもおかしくなくなってしまうことがあげられた。
このようなクリエータの動きは、TV局側にとっては非常に怖いところであろう。中井氏はTV局は銀行よりも守られた護送船団の中にいて高い利益を享受していると評していたが、まったく同感である。強力なコンテンツを持ち、タレントの発掘・プロモーションからコンテンツ制作、コンテンツ配信まで垂直的なメディア事業を行う吉本にはぜひ新しいメディア環境を引っ張っていってもらいたいと思う。
2002年07月01日
特許紛争
6月は今後のインターネット放送の行方を左右するであろう重要な法律・特許に関する判断(ただし最終判断ではない)が立て続けにでた。最終的な結論が出るにはまだ時間がかかるであろうが、今後への影響が非常に大きいと考えられるので、推移を見守る必要がある。
一つは、EPG(Electric Program Guide, 電子番組表)の事業をやるときに必ず喉にひっかかった骨のように関係してくるいわゆる Gemstar 特許についてである。この特許はかなり包括的でEPG事業をするときは常に意識しなければならないものであり、私見ではEPGビジネスがなかなか広がらないのはこの特許が一つの理由であると思う。これに関係して、米国にこの特許に違反しているとGemstarが訴えた製品の輸入禁止を求めがITCの裁定により退けられた。Wall Street Journal による記事はここ。今後、裁判所でさらに裁判が進められることになるだろうが、もし Gemstar 特許の有効性が減ぜられるような結果になった場合は、業界に新たな流れが生まれるであろう。
もう一つ、HDR (Hard Disk Recorder, ハードディスクデジタルビデオレコーダ)メーカの1社である Sonic Blue が、TV局側から訴えられている裁判に関する裁定である。詳細はここなどを見てもらうことにして、この裁判はHDRが裁判によりどのくらい社会に許容されることになるのか、その結果伝統的な広告ベースのTVのビジネスモデルにどのくらいの影響が出るのかが見ものである。
繰り返すが現時点ではどちらも最終判断ではなく、今後の進展が待たれる。しかし、インターネット放送の進展には法律・制度面での整備が不可欠であり、こういった争いを通じてルールが作られていくのであろう。